ヘンリー・リー・ルーカス②:母の声は響く。そして彼は旅に出た。

ヘンリー・リー・ルーカス②:母の声は響く。そして彼は旅に出た。
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どーも皆さんこんばんわ

ゲーム探偵でおなじみ、ガンダルフと申します。

 

今日はルーカスの逃走後から。

 

ヘンリー・リー・ルーカス

(1936年8月23日~2001年3月13日)

映画「羊達の沈黙」などで有名な「ハンニバル・レクター」のモデルの一人

 

逃げ出したルーカス

車でバージニアに逃走したヘンリーでしたが、結局オハイオ州トレドで警察に見つかりました。その後ミシガン州へ戻り二度目の殺人により起訴。

警察は最初、自衛のため行動したという事実に理解を示したにもかかわらず、ヘンリー自身が有罪を認めたことでサウスミシガン州刑務所で20年から40年の刑を言い渡されます。

 

 

この間のヘンリーは、「ずっと声が聞こえていた」と語ります。

投獄されてからまもなく、彼の頭の中に母ヴィオラの声が響き渡り「お前も死ね」などの自殺を促す言葉を発するというのです。

その声が聞こえるたびに破壊衝動に苛まれ、「もう我慢できないから自ら死のうと思う」と姉に手紙を書いています。

 

しばらくして、彼は本当にカミソリで手首を切りました。しかし刑務所の監視員に制止され、イオナ・ステート・メンタル病院へ移送されました。

4年半の薬物療法とショック療法が行われましたが、精神分裂症の症状は悪化するばかり。また同時に心理学者から過去の状況も洗いざらい調べられた際「セックスの際に相手を殺さなければ絶頂に達することができない」と話しています。医者からのヘンリーに対する評価は「釈放後には間違いなく殺人を犯すだろう」でした。

 

結局1966年には刑務所に戻され、仮釈放委員会にかけられることになりました。ヘンリー自身は仮釈放を望まなかったんですが、その頃のアメリカはベトナム戦争の泥沼化によりめちゃめちゃ貧乏。

囚人に金なんか払ってられるかあぁぁ!!!

という理由で仮釈放は進められていきます。

名目上は「更正の見込みある犯罪者には可能な限り社会復帰のチャンスを与える」ということでした。

 

 

早期釈放を推進してから、獄中で電気技師の資格を取得し、加えて大学レベルの教育プログラムを修了していたヘンリーは、比較的よい評価を受けていました。

仮釈放委員会に呼び出されたヘンリーは「アナタは釈放を、人を殺しますか?」と問われた際

「はい。私は間違いなく人を殺します」

と答えます。

 

仮釈放委員会はその言葉を”ジョーク”だと捕らえました。ヘンリーの仮釈放は結局進められ、4年後の1970年6月に早期釈放を受けています。

 

 

ヘンリーは刑務所の入り口に立つ兵士達に「あなた方の玄関先に、プレゼントを置いていきます」と言い、立ち去って

 

数ブロック先で本当に女性を絞殺しました。

 

当局は彼の主張を支持する証拠を明らかにしませんでしたが、その日彼は二人の女性を殺害し金品を強奪一人を刑務所の壁の前に置き去ったと主張しています。

 

 

新たな自由は長続きせず12ヵ月後、バス停から10代の少女を誘拐しようとしたところ、ハンドガンを所持していたのを警察に見つかり仮釈放違反として起訴されます。

さらに4年の刑期をそこで過ごし、1975年8月に釈放されてからヘンリーは全国各地を旅し始めました。この放浪の旅は

アメリカ事件史に最も物議をかもす旅になります。

 

旅の始まり

最初は妹のところに身を寄せたヘンリーですが、波乱万丈な恋模様を経て旅に戻り、1979年にオッティス・トゥーレという男に出会います。

下品で野蛮なこの男、会話を始めてすぐに仲良くなりジャクソンビル郊外のスプリングフィールドにある彼のトレーラーハウスに寝泊りするよう誘われます。

 

 

当時のオッティスは多くの親類と同居していましたが、家族はオッティスが奇妙な人を家に連れて帰ってくることに慣れていました。

バイセクシャルであるオッティスは、SEX目的で連れてきたと述べました。ヘンリーもこれに同意。バリバリやばい感じは否めませんが、そこがヘンリーの新たな拠点になりました。

 

 

その後オッティスの働くペンキ工場で職を得たり、辞めて旅に出たこともありましたが、結局はジャクソンビルに帰ってくるようになっていたため、この拠点は彼にとっての安らぎの場所だったのかもしれません。

そしてある時その安らぎの場所で、一人の少女に出会います。

ベッキーという名の少女は12歳、無条件でヘンリーを受け入れてくれました。行動の多くを共にし、あるときはベッキーの髪をヘンリーが梳いたりも。

確実に彼女を愛していましたが、SEXを求めることはしませんでした。

代わりに性衝動に駆られるたびに、別の女性を殺害してレイプした後に彼女の元に帰ってくるようになります。

 

 

メリーランド州からカリフォルニア州、テキサスからミシガン。ヘンリーとオッティスはベッキーを連れて旅行に出ています。

その目的は、強姦・強盗・殺人という悪行三拍子 

ベッキーを車において、二人は犯罪を犯し何食わぬ顔で帰ってくる生活。ベッキーはどのように感じていたんでしょうか。

犠牲者の一人は、全裸で野原に投げ捨てられているのを発見されますが

 

 

胸、首、腕、そして背中に35回の刺し傷と共に、胸のど真ん中から恥骨まで深い切り傷が残されています。

乳首は切り取られており、無残そのもののその遺体は、ヘンリーとオッティスの狂気を教えてくれます。

 

時にはオッティスと二人だけで”強盗”旅行に出かけ金を稼ぎ、家に帰ればベッキーが待っている。そんな生活が彼にはささやかな幸せだったのでしょうね。

 

死のカルト教団

ルーカスとオッティスがのちに警察へ証言した主張の中で、カルト教団に関する話があります。

二人は見知らぬ男から、盗難車を運転して配達する仕事の提供を持ちかけられますが、逮捕の可能性が高まることから申し出を拒否。すると、彼らの「組織」に変わって殺人をする仕事に興味があるか?と問われます。

そうです。殺し屋の仕事です。

 

彼らの組織は「death hand」と呼ばれる悪魔崇拝カルト。この申し出を二人は受け、指導者達と会うために「メテリック」と名乗る見知らぬ男と共にフロリダへ向かいます。

 

マイアミのウォーターフロントにある廃棄された倉庫で、”ドン・メーター”と名乗る男に会い、二人がこれまで犯した犯罪について問われます。

すると、不思議なことにメテリックから二人の犯罪経歴がペラペラと明かされたのです。

もちろんヘンリーはそんな話を男にしてはいません。何故そのことを知っているのかと問うと、男は

「オッティスは何年も我々のために仕事をしてきた」と笑って答えました。

 

カルトに加わる前から、ヘンリーはオッティスに操られていたということです。

 

 

後にヘンリーは「裏切りだった」と語りますが、このカルトに加わることにしました。その後は「訓練」を受けるためエアボートに乗って島へ連れて行かれ、ここで任務を待つように言われます。

 

一時間後にやって来たメテリックは、「ターゲットは隣のテントにいる」と言い「彼に気付かれないように、喉を切り裂け。後で死体が必要になるから、キレイに裂けよ」と指示を受けました。

 

つづく