ロバート・ハンセン:この男、文字通り「狩人」

ロバート・ハンセン:この男、文字通り「狩人」
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どーも皆さんこんばんわ

ゲーム探偵でおなじみ、ガンダルフと申します。

 

『俺は人殺しが好きだ。とても楽しいから、森でケモノを殺すよりも楽しい。』
『人間は一番危険な動物だ。殺人は俺にとっては最高のスリル。女の子とセックスするよりも楽しい。特にいいことは、俺が死んで楽園に生まれ変わった時、俺が殺した奴らはそろって俺の奴隷になるところだ。』
『俺の名前は言わない。言えばお前たちは、将来、俺が生まれ変わった世界のために、今やっている奴隷狩りを邪魔するか、やめさせようとするからだ。』

 

この言葉を皆さんは覚えていらっしゃるでしょうか。

 

これは、1932年に放映された『The Most Dangerous Game』という映画で使用されていた言葉です。

 

この言葉に強く影響を受けた一人の男が、のちに猟奇殺人事件を起こした例がありました。

かのゾディアック事件です。

彼は暗号を新聞社や警察へ送りつけましたが、暗号を解いてみるとそこには上の文章がありました。正体を明かすのではなく、犯行動機を暗号文にして贈りつけてきたのです。

 

 

むいみ~!!!

 

 

でもね、この映画のコンセプトはいわゆる

人狩り

狩りをやる人には、害獣駆除や生態系を守る目的がある人も沢山います。

しかし、中世イギリスなどでも紳士的スポーツとして「娯楽」の一面を持っていたことは確かです。

映画化もされてるくらいですから、人間の根底にはこういう「悪しき娯楽」に対する欲求もどこかにあるんでしょう。

 

というわけで、なんか例はないかな~と探していたら。

 

いました。まんまなヤツが。

 

というわけで、今日ご紹介するサイコパスはコイツ

 

ロバート・ハンセン

 

本名:ロバート・クリスチャン・ハンセン

(1939年2月15日~2014年8月21日)

 

幼少期

ハンセンは1940年にアイダホ州ポカホンタスにて、パン屋の息子として生まれました。身体は小さくガリガリで痛々しく、大きなニキビと吃音が彼の自身へのイジメに繋がり、人嫌いで一人で過ごすことが多かったようです。

 

1957年に合衆国陸軍の予備部隊に入隊し、退任されるまでそこで1年間勤めました。その後はポカホンタスの警察学校で、ドリルインストラクターと呼ばれる訓練教官を勤め、1960年の夏には結婚を果たします。

 

しかし同年12月7日

地元スクールバスのガレージに放火

 

ここまでは順風満帆だった彼に何があったのか、逮捕された彼は妻からの離婚申請に同意し、3年間を刑務所で過ごします。

出所後も更正することは無く、複数回の窃盗事件を起こしそのたびに投獄され、荒れた生活を送っていました。

 

しかし、1963年には再婚。その後はポカホンタスで事件を起こした記録は残っていません。

 

1967年にはアラスカのアンカレッジへ移住し、妻と2人で新たな人生を歩むことにしました。

 

アンカレッジでの生活 

 

ハンセンは狩りを趣味としていて、時々アンカレッジの森で獲物を狩り、狩りチャンプとして有名人になります。近所の人からも好意的に見られており、好スタートを切ったといえるでしょう。

 

しかし、1977年にデパートからチェーンソーを盗む事件を起こし投獄。精神鑑定を受けたところ”双極性障害”と診断され、服役の1年間は薬を与えられて治療が行われました。

 

釈放後の彼は、2児の父として家族を養うべく父と同じパン職人としての道を歩むため、パン屋を開業することにしました。地元民との交際も欠かさず、コミュニティの柱として立派に活動していたようです。

 

しかし、彼に行われた精神治療はあくまで投獄中だけのものでした。一時的に症状に改善は見られたものの、外での日常を過ごすうちに彼は薬を飲まなくなります。

 

双極性障害とはいわゆる”躁うつ病”。気分の浮き沈みが大変激しく、感情のコントロールがとても難しい病気です。

表の顔はキレイに見せられても、裏の顔はずっと彼の中に潜んでいました。

 

 

一狩り行こうぜ

ハンセンはレッドライン地区と呼ばれる裏町で、売春婦やストリッパーを買っていました。

17歳のシンディ・ポールソンを200ドルで買い、自身のピックアップトラックの中で彼女の仕事を堪能します。すると

突然シンディに手錠をはめ、彼女を自分の秘密基地へ連れ去ります。

 

家の地下室を基地にしていた彼は、部屋の中央の柱に裸で手錠をかけて強姦しました。部屋には夥しい数のトロフィーが飾られており、彼女もまた彼の実績の1つにしようとしていたんですかね。

そして飽きた頃に彼女に服を着るように命じると、地下室に鎖で繋ぎ、ソファで眠り始めました。

目を覚ました彼は、「お前をキャビンへ連れて行く」と言い、彼女を車に乗せてメリルフィールド空港へ向かいます。後部座席で身をかがめていた彼女は、私用飛行機へ荷物を積み込み始めたハンセンの隙を突き、運転席を通って逃げ出しました。

 

 

振り返らずに走る彼女は、道路にトラックのヘッドライトが近づいてくるのを見ると、運転手へ手を振り助けを求めます。

36歳のトラック運転手ロバートの手により、ボロボロの格好をしていたシンディは手錠をはめたままアンカレッジ警察へ駆け込むことが出来ました。

 

「彼は私を殺すつもりだ。間違いなく殺すつもりだった」と証言する彼女は、ハンセンが連れて行った家と飛行機の詳細を警察に伝えます。

警察は、ハンセンのことを地元のパン屋であり名士だと知っていました。しかし、証言にある家と飛行機は確かにハンセンの物で間違いありません。

 

数時間後、ハンセンの家を訪れた警察はそこでハンセン本人に体面します。酷く言葉が詰まってはいましたが、アンカレッジにする他の2名の男性からアリバイ証言を得られます。(もちろん偽装工作)

売春婦と名士の証言では、警察の対応も異なってしまうでしょう。警察はシンディを解放し、この事件の捜査を終了しました。

 

数ヵ月後、転機

シンディの事件から数ヵ月後の1982年、アンカレッジから数マイル離れた森の中で、ハンターのチームが女性の遺体を発見します。

 

 

遺体は一年間行方不明だったトップレスダンサーの、シェリー・モローのものでした。

実はこの遺体が発見される一年前にも、警察は同じ地域で身元不明の死体を発見しており、ちょうどその頃から近しい職業の行方不明者が多発していることを認識していました。

 

 

身元不明の遺体は1981年頃に、建設作業員の男性が発見した「熊に半分食べられた若い女性」のものであり、識別は難しかったことから顔面再建を行い公表しましたが、犠牲者の特定が出来なかったものです。

そりゃコレじゃあな。

 

二つの遺体は銃殺されており、弾丸から0.223口径のRuger Mini-14というライフルから発射されたものであることが分かります。遺体はどちらも服を着用していますが、服に弾痕は残っておらず、死後に着せられたものであることも判明。

この事件を、同一人物の犯行と見なして捜査を開始しました。

 

 

ジョアンナ・メッシーナという女性の遺体も、同様の手口で殺されているのが発見され、警察は犯罪心理学のプロフェッショナルであるロイ・ヘーゼルウッドに助けを請います。

ヘーゼルウッドはプロファイリングの結果から、犯人は「自身薄弱で経験豊富なハンターであり、女性に拒絶された過去がある。被害者の所持品を殺害の”記念品”として保管している」と示唆しました。

 

過去の記録から容疑者としてハンセンに目星を付け調査を進めると、遺体の遺棄現場付近にハンセン所有の小屋を持っていることが明らかになります。

 

警察は事情聴取のためにハンセンの家を訪れますが、ハンセンはこれを頑なに拒否。警察は諦めず、捜査令状を取り彼の家の家宅捜索が始まりました。

 

 

1983年10月27日、ハンセンの屋根裏部屋の角に隠されていた行方不明者のものと思われる宝石類と、大量のライフルを発見。

 

 

その上、小さな×印が20箇所に書き込まれた航空地図も見つかりました。

この印の内、遺体の発見場所と一致したものがあったことから、他の場所も捜査に向かいたいところでしたが、アンカレッジの10月は日本の冬とは比べ物にならない氷の世界。

凍りついた大地を掘り起こすわけにも行かず、ハンセンに詳しい話をと詰め寄ります。

出来る限りの否定をするハンセンでしたが、最終的にそれは女性に対する非難に変わり、自らの動機を正当化しようとしました。

 

 

そしてハンセンは警察に司法取引を持ちかけ、家族が裁判により疑われることを防げるなら、既に発見されている死体4件(1983年9月に発見されたポーラ・ゴールディング)について犯行を認めるとしました。

 

結局4人の殺害と、逃走したシンディの誘拐・強姦の罪により、仮釈放無しで461年の懲役刑に処されましたが、他にも16歳から41歳の間に少なくとも17件の殺害を行ったと供述。

その多くはハンセンの供述により氷の大地から掘り起こされましたが、残念ながら6人の遺体は未だ発見されていません。

 

ハンセン自身は2014年8月21日に、アンカレッジのアラスカ地域病院にて75歳で亡くなりました。

 

まとめ

こうして彼の「The Most Dangerous Game」は幕を閉じます。

狩人は、命を頂く仕事。

日本でも狩猟免許を取得すれば、シーズン中にライフル銃による狩りを行うことが出来ます。

強力な力を手にした者は、いずれその力を振るわずにはいられないというのも、また人の側面に存在していることを忘れないでください。