ジョン・ヘイグ①:”とある思い付き”を実行してみたサイコパス
- 2020.12.14
- サイコパス名鑑

ど~も皆さんこんばんわ!ガンダルフと申します。
購入したプリンターが届きました。
brotherのモノクロレーザープリンターです。
今どきのプリンターは、Wifiを介してコードレスに印刷することが出来るんですね。驚きです。
印字の様子も悪くないし、これで人生にまた一つ彩りが産まれること間違いなしです。
カラー?そんなもん必要ありません。モノクロで十分彩れるから安上がりで大変結構です。
昔はプリンター一台に5~6万は払っていたことを思い出しましたが、さすがはプリンター業界。
今ではまったくそんな素振りも見せやがりませんね。
インク代で元を取る形の業態、あんまり好きじゃないなぁ。
色々なところで「プリンターはインクで稼ぐ」という構図を見たことがありますが、証拠を突きつけたところでプリンター業界は微動だにしません。
業界も顧客も、それが当然のことだと思っているのですから。
というわけで、本日は友人から教えてもらったこんなサイコパスをご紹介。
ジョン・ジョージ・ヘイグ(John George Haigh)
通称:アシッド・マン
失踪
1949年3月3日、ロンドンのデイリーミラー氏はある殺人に関する一連の記事を書き始めました。
「吸血鬼狩り」
そんな見出しで始まる記事は、2週間前の2月20日に行方不明になった、69歳のオリーブ・デュラン=ディーコン夫人にまつわるお話です。

この女性は、サウス・ケンジントンにあるオンスロー・コート・ホテルに二年間滞在中でした。
彼女の失踪届を出した男女の一人であるジョン・ヘイグという人物は、サセックスにある彼の仕事場をディーコン夫人が訪れるはずだったのに、いつまで経っても姿を見せなかったといいます。
ヘイグ氏は夫人の友人であるコンスタンス・レーンに会いに行き、彼女の様子を聞きました。
レーンもディーコン夫人の行方が分からなくなっていたようで、夕食時や朝食時にいつもの席にこないことを心配して、客室係に夫人が行方不明であることを告げます。

ディーコン夫人は、友人に何も告げず外出するような人ではありませんでしたし、自身に厳しく規律ある生活をする人。
ヘイグ氏の話を聞いたレーンは、これを事件であると判断し、警察へ届け出ることにします。
ディーコン夫人の写真と恰好に関する説明文が、警察署、マスコミ、ホテル関係者に配布され、ホテルで事情聴取を担当していたランボーン巡査部長は、ホテルの支配人に様々な質問をしましたが、その中で奇妙な話を聞きました。
支配人から聞くヘイグ氏の説明が、どうもおかしいのです。
「ヘイグ氏は、裕福な年上の女性たちから妙に人気のある中年男性で、口がうまい。」
「彼はホテルに借金がある。」
そう言って借金の記録を提示する支配人でした。
ランボーンは、ヘイグ氏を怪しいと思い、身元調査を行うことに。
1時間もしないうちに、ロンドン警視庁の報告が届きます。
犯罪記録局によると、ヘイグ氏は詐欺罪で複数の逮捕歴があり、詐欺の共謀、偽造、窃盗の罪で刑期を過ごしたことがあるとされていました。
ヘイグ自身は、青い目をしたナイスガイ。
清潔感があり、服装もスタイリッシュであか抜けており、行方不明者のニュースを目的に集まった記者たちにも好印象。
ディーコン夫人の不在を気にかけている様子で、記者のあらゆる質問に答えていました。
記者の中には、ヘイグ氏が常に手袋をしていることに気が付いた人もおり、彼は潔癖症であることが知られるまで、それほど時間はかかりません。
実は、ヘイグ氏がホテルで快く取材に応じ、夫人が無事に見つかることを願っていると強調していた時、ウェストサセックス州警察は、クローリーにある”ハーストレア・プロダクツ”というヘイグ氏の仕事場を調査していました。

ヘイグ氏の肩書は「取締役」だったのですが、すぐにそれがでっちあげであったことが判明します。
彼はこの会社から、二階建てのレンガ造りの店先を借りており、自ら「実験的な仕事」と呼ぶ仕事をしていたそうです。
”ハーストレア・プロダクツ”の常務取締役からお金を借り、店の改造工事をしていると話していたこともありました。仕事内容な、強酸を利用して廃品を処理するという普通の物。やる気のある人はそこそこの大金を稼ぐことが出来たといいます。
パット・ヘスリン率いる警察隊は、部屋の中身を調べるために無理やり屋内に入り、大量の雑多な道具と、強酸を入れるのに使う10ガロンのガラス瓶が二つ(一つは空、もう一つは半分空)やガスマスク、薬品で汚れたゴム製エプロンなども見つけます。
警察隊はさらに、男性の帽子箱と、J.G.Hのイニシャルが入ったアタッシュケースも見つけました。
帽子箱の奥には、38口径のエンフィールド・リボルバーと8発の弾丸が見つかり、最近発射された痕跡まで発見。
他にもアーチボルト・ヘンダーソン、ローズ・ヘンダーソン、マクスワンという3人に関する書類が見つかりました。中には結婚証明書や運転免許証もあり、明らかに本人以外の人間が持つにふさわしくないモノです。
そして決め手はクリーニング屋の領収書。
預けられた服は1着のコート。ディーコン夫人のホテルにあったワークバスケットの中に、同様の素材の切れ端があったことから、彼女の所有物であることが判明。
また、彼女が行方不明になった翌日に、宝石を宝石店に持ち込んだものがいるとの報道が流れ、回収した宝石を親族に見せ、ディーコン夫人の物であることを確認させました。
宝石商のアシスタントによると、宝石を売却した人物は「J.マクレーン」と名乗っていたようです。
しかしこの人物、以前にもここを訪れており、その際は
ジョン・ジョージ・ヘイグ
そう名乗っていました。
当然ヘイグは逮捕。
彼らが、ディーコン夫人の行方を突き止めるのは、もうすぐです。
告白
チェルシー警察署に連行されたヘイグは、署内であるにもかかわらず飄々としていました。
タバコを吸い、新聞を読み、居眠りをぶっこき。
警察は彼の尋問をする準備のために約3時間を費やしたそうですが、それはヘイグに戦略を立てるための時間を与えてしまったようなもんです。
その間、ローズ・ヘンダーソンの兄から、「ヘイグこそ妹が失踪する前に彼女を最後に観た人物だ」という連絡を受けていました。
尋問開始時から、ヘイグは警察は自分に手出しできないと傲慢に思っていました。
理由は後述しますが、警察の質問内容から、ヘイグは自分が不利になる証拠を警察が持っていることに気づきます。
最初にコートがローズ・ヘンダーソンの物だとウソをついた後、ゴリッゴリの尋問によりディーコン夫人の宝石を売ったこと、そしてコートが彼女の物だと知っていたことを認めました。
「どうやってローズ・ヘンダーソンの財産を手に入れたのか」
「ヘンダーソン夫人やディーコン夫人の居場所はどこか」
その質問に対し、最初は脅迫されていたとでっち上げ始めましたが、すぐに話は破綻します。
それでも、ヘイグの傲慢な態度に変わりはありませんでした。
この時点で、どうあがいても警察は自分を逮捕できないと確信めいたものを持っており、「デュラン・ディーコン夫人はもう存在しない」とうそぶきます。
その理由を何度も問いただされ、観念したヘイグは話し始めました。
「彼女はこの世から完全に姿を消した。2度と痕跡を見つけることはできないだろう」
「私は彼女を強酸でドロドロに溶かした。レオポルド通りに残っているヘドロを探してみろ」
「遺体なしで、どうやって殺人を立件するんだ?」
彼が自分を逮捕できないと踏んでいた理由。
それはつまり、「だれが殺人を行ったのか証明できないから」でした。
刑務所時代
何年も前に刑務所に入所していた時、ヘイグはこの法律について仲間と議論したことがありました。
”死体が無ければ、有罪判決を受けることはできない”と彼は自分自身を納得させていました。実際、この法律問題について彼は頻繁に話していたため、仲間内から”Ol’ Corpus Delicti “というあだ名が付けられています。
※Corpus Delicti(コープス・デリッチ)=「遺体という証拠」
実際に殺人罪で起訴するには、警察が遺体を持っていなければならないと彼は確信しており、ならば遺体を消す方法があればいいとも思っていました。
刑務所の中で、ネズミを使った遺体消失実験を酸で行います。また、本物の金を手に入れるには、年上の裕福な女性を捕まえなければならないとも言っていました。
しかしヘイグは、死体が無くても有罪を証明できる状況証拠の重みを考慮していませんでした。
彼が傲慢な態度でボロボロ喋ったことは既に自白と同様、警察の立証に大きく貢献するものだったんです。
あとは、裏付けがあればいい。
ディーコン夫人のコートや宝石に付着していた”泥”。
ここから証拠が回収できるか、調べるときが来ました。
つづく
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